インスリンを使用している患者が運動するなら、インスリンが効いている時間帯にすべきなのは当たり前のことです。インスリンが効いていない状態で運動すると、血糖値がどんどん上がってしまいます。
運動することで、同じ量のインスリンで下がる血糖値が大きくなりますが、これに対応する方法が大きく分けてふたつあります。この違いが5年後10年後の人生を左右します。
ひとつは下がってしまう分を見越して、運動前の血糖値を明らかにおかしいくらい高くする方法。例えば、運動前の血糖値を200mg/dlなどの高血糖状態にします。
もうひとつは、運動するのに合わせてスポーツドリンクやその他の食品と、運動のために少なくしたインスリン注射を導入する方法です。例えば普段なら2単位必要になるようなドリンクを飲んで、注射は1単位にしておく、などです。
当然、どちらにした方がよいかというと、後者になります。前者は高血糖であることには変わりがないので、血管に直接のダメージを与える上、糖が代謝されずに尿に漏れ出してしまっています。日常的に尿糖が検出される状態を作っているということになります。もちろん、「年に数回」こんな方法で低血糖を避けながら動くというのはアリですが、日常的にこんなことをしていると、血糖値がコントロールできていない人と同じように合併症へと近付いています。ダメージは同じです。良かれと思って運動しているのに、方法がまずくて自分を傷付けるなんて本末転倒です。
運動に合わせて糖とインスリンを補給するのは確かに面倒です。よって、普通に食事をしてから歯磨きをし、その後運動する、というリズムを作るのが一番自然です。その場合、やるべきことといえば「食前のインスリンを運動に合わせてわずかに減らす」だけ。血糖値はいつもどおり、正常な範囲のまま運動が楽しめます。
日頃から家畜の豚みたいに食べ過ぎていると「痩せるために運動する」などという馬鹿げた習慣を生み出します。日頃から適切な食事をしている人は、運動する時にその分余分に栄養摂取することになりますが、これこそごく自然なことだとは思いませんか?スポーツ選手だってオフシーズンは見合った量しか食べません。
運動は体型や体調を良い状態に保ちたいから、または、単純に楽しいからという理由でするのが良いです。痩せるためなんて言い出すと、運動前に栄養補給することができない、もしくはためらいが出ます。結果、血糖値を高めにするしかなくなります。運動で得るものと失うものの両方を大きくしています。適切な方法で運動することで高血糖も低血糖も避けられるのですから、どのように運動するのが楽しく安全なのかを知ることはとても大切なことだと考えます。痩せる必要がある人は、そもそも太る原因が食べ過ぎなんだと知ることから始めると良いです。
運動に限らず、動いているうちに血糖値が下がってきてしまうことは一生の中で数え切れないくらいやってきます。それに対し、
- 事前の血糖値が低いからそもそも参加しない・動かない・やめておく
- 事前の血糖値を普通じゃない範囲で高くしておく
と、自分にダメージを与えたり、引き篭もりみたいになったり、やらなきゃいけない地域活動をサボる言い訳にしたりしてはいけません。自分や周囲の人にとってデメリットでしかないし、時には大きな迷惑です。
動くことと血糖値が下がること、それとどのように付き合っていくかは人それぞれですが、せめて誰にも迷惑を掛けない方法を選びたいものです。僕は自分を傷付けず、誰かにも迷惑を掛けない方法で生きていきます。どうしたら良いかわからない、方法が定まらないという人には、ぜひ、「下がる分は摂取しちゃえ!」をお奨めします。日頃の食生活を乱れさせないことが前提にはなりますが、そんなことは現代の社会人にとっては常識みたいなものです。見渡せばそれくらい自己管理している人だらけです。血糖値が下がるなら糖を摂取、体重が下がるならバランスよく色々摂取。とても自然で安全です。