2008年8月アーカイブ

ストレスによって血糖値が高くなるという話がありますが、病気でなければ血糖値が上がったりはしないのだろうと思います。

ストレスがあると血糖値を上げる作用のホルモンが分泌されますが、通常であればそれで上がった血糖値に反応してインスリンが分泌されるため、結果として血糖値は正常範囲に保たれます。

1型糖尿病の場合、このように食事や通常のホルモン分泌の予測からはずれた血糖値上昇の要因に対しては無防備であると言えます。自分でインスリンを分泌することができない(インスリンの自己分泌が残っている人は例外)のですから、計算外に血糖値が上がってきたら、それはそのまま上がりっぱなしになってしまいます。

ストレスなどで血糖値が上がると言っても、絶食状態なら血糖値を上げるホルモンがいくら分泌されても上がるわけないので、結論、蓄えてあるものが尽きればそれ以上は上がりません。よって、どんなにストレスがあっても、無尽蔵に血糖値が上がるわけではないので、ちょっと怒ったり興奮したりしたくらいで100mg/dlも200mg/dlも血糖値が上昇することはほとんどありません。せいぜい30mg/dl~50mg/dlがいいところで、それ以上上がるようであれば、それは偶然ストレスと重なっただけで、実際は食事の計算ミスか何かでしょう。

このように不安定で不確定な血糖値変動ですが、僕の場合暑さによって血糖値がじわじわ上がるのを実感します。すごくわかりやすいのが夕食前血糖値なのです。摂氏30度を超える気温の中移動したりしていると、夕前100mg/dlを超えていることが多かった7月・8月ですが、最近涼しくなったなと思ったら、途端に70mg/dl~90mg/dlに落ち着くようになりました。

平日の昼食はほとんどがお弁当なので、計算を外すことはほぼ100%ありません。つまり、夕食前の血糖値がはずれるとしたら、ほぼ昼食の計算ハズレではないと経験上言えます。平日の夕食前血糖値について振り返ってみました。100mg/dl以上だった回数をカウントします。

年月回数
2008年4月 1回
2008年5月1回
2008年6月2回
2008年7月8回
2008年8月6回

8月はまだ1週間残っているのでカウントが増えるかもしれません。こうして見ると、やはり7月から急に増えたのがわかります。昨年もこんな感じでした。夏でも雨などでピョコっと涼しい日があったりしますが、そういう時はやはり夕食前の血糖血が高くならずに済みます。

暑さによって血糖値がじわじわ上がるのですが、その影響を強く受ける時間帯は、昼食の超速効型の効力が低下~終了の食後4時間後以降辺りからのようです。そもそも中間型を寝る前に1回打つだけのスタイルでは、夕食前のこの時間帯に超速効型も中間型ほとんど仕事していないわけで、血糖値を上げるホルモンに活躍されてはなす術がありません。

いつもいつも暑さのせいで、一定で血糖値が上がるのが確定しているなら調整しやすいのですが、暑い日ばかりとは限らないので余計な調整を入れたがために予測をはずして低血糖というのはいただけません。なぜなら、この時間帯は自動車の運転をしている可能性が高いからです。運転に支障が出るような低血糖にはならないでしょうが、低血糖の症状を感じたらなるべく測定してからブドウ糖や砂糖を摂りたいと考えている以上、運転中は鬱陶しいです。

よって、暑さで多少高めになる分は、今は積極的に対処しないことにしています。昨年はその結果HbA1c5.2%まで上がりましたが、今年はどこまでいくでしょうか。9月、10月の検査結果が楽しみです。

自分なりの基準を持つという記事でHbA1cと血糖値の基準の表について書きましたが、本文の内容について以下のようなメールをいただきました。

HbA1cの値についてですが、健康診断でHbA1c5.2%で注意を受けました。結果票裏面の正常範囲の表を見ると、HbA1c5.2%以上でメタボリックシンドロームのチェックを受けるようです。「5.2%以上」で警告なので、「5.2%を超える」と警告ではないみたいです。BIZさんも確認してみてください。

メールありがとうございました。メールしてもらわなければ全然気付かなかったかもしれません。

冒頭で引用した記事では、

>HbA1cは5.2%を超えると*マークが付けられるようになりました。

と書きました。メールをいただいて確認したのですが、確かにメタボ警告の基準値は「HbA1c5.2%以上」と記載されていました。自分なりの基準をHbA1c5.2%までとしていたので、勘違いしていたようです。5.2%になった時点で*マークがつくので正解です。

ということで、会社の健康診断で注意を受けたくない僕は、自分なりの基準を改めなければならないということになりました。

 正常注意不可自己平均
HbA1c4.3%~5.1%5.2%~5.8%5.9%~4.8%~5.2%

[mg/dl] 最悪不可注意正常注意不可最悪自己平均
食前血糖値~3940~4950~5960~99------100~119120~70~80
食後血糖値~4950~5960~6970~130131~140141~179180~100~120

HbA1cについて変更しました。次の定期受診ではHbA1cが5.2%になりそうだと予想しているため、注意ゾーンへ突入ということになりました。これに伴って、従来の

  • HbA1c4.8~5.2%を目標に

というのは、

  • HbA1c4.8~5.1%を目標に

というように関連ページを修正していきたいと思います。HbA1c4.9%というのが自分の中では一番気分が良い気がしているのですが、秋くらいには戻るでしょうか。暑さが嫌いなので、涼しくなるだけでコントロールは良くなる傾向になるのですが。

休前日は朝方まで遊んでいることが多いです。

基礎インスリンとして中間型を寝前1回打ちしている都合上、明るい時間帯は基礎インスリンがほとんど切れている状態で毎日を過ごしています。

それでも高血糖状態にならないのは、朝食や昼食の時刻がある程度決まっていて、超速効型が決まって注射されることがわかっているからです。基礎がなくても、食事ごとの超速効型でついでに代謝されているので目立った高血糖にならないだけと言えます。

つまり、食事抜きが苦手ということです。

夜通し遊んで朝寝て、昼前に起きる。昼食前の血糖値を測定すると110mg/dl前後、悪い時は120mg/dlまで上がってしまっています。この時、朝寝る前の血糖値が80~90mg/dlであることがほとんどなので、5時間か6時間の睡眠中にじわじわ30mg/dlくらい上がってきていることになります。

これが平日にも発生しているのかどうかは睡眠のリズムの関係もあって僕には正確にはわかりませんが、対処しなければ毎週末に食前高血糖を発生させてしまいます。食事抜きだから完璧には対処できなかったとしてももう少しなんとかしたいところです。

そこで、徹夜明けの朝、寝る前に中間型を少し打つことにしました。最初は1単位から試して行き、低血糖にならずに高血糖も回避できる量を探りました。僕の場合、朝寝る前に中間型を4単位打つと昼前が100mg/dl未満に抑えられる可能性が高いようです。

それ以来、徹夜+朝食抜きで昼まで寝る時には、朝寝る前に中間型4単位が習慣となりました。しかし、それでも完璧ではなく、前日の遊び具合+徹夜で食べたものの後遺症によっては起きた時(昼前)に120mg/dlくらい行ってしまう事も度々あるのですが。それでも対処なしよりはマシだと考えています。

中間型は超速効型と違い、多く打ってしまった時の低血糖の対処が長時間に渡るため、あまりテクニックを駆使して弄り回さない方が良いと考えているので、今はこの程度しか応用できていません。

インスリンの注射をするようになって初めて気になったのが「そもそも病気になる前はどれくらいのインスリンが必要だったのか?」です。

結論から言うと、注射している量に近いはずです。では、注射を初めて導入するときに、目安となる値はどのように求められているのでしょうか?

インターネット上の情報はいろいろありますが、どうやら「体重1kgにつき・・・」という表現が一般的なようです。肥満がなければ(標準的な体重であれば)、かつ、食事の内容(炭水化物の占める割合)が一般的な日本人であれば、体重の0.5~0.7倍の単位数のインスリンが必要だそうです。

1型糖尿病でも、太っていたり運動していなかったりと、2型糖尿病に近いメタボ具合の人もたくさんいますから、インスリンが体重の1倍、もしくはもっと多く使われている場合もあるようですが、体の小さな女性であれば、25単位くらい、体の大きな男性であれば50単位くらい使っていたりするようです。

僕の場合だと、体重74kgでインスリンは超速効型26単位+中間型10単位で合計36単位使っています。発症当時は自己分泌が残っていたのでもっと少ない注射量だったのですが、運動量や食事の内容から考えて妥当な量になりました。ご飯やパンが多い食生活になれば、50単位くらいは使うと思います(普段は白米なら200g、パンなら6枚切り2枚が僕の標準量です)。

太ったり運動しなくなったりすると、いつもと同じ量の食事と同じ量のインスリンなのにコントロールが悪くなった経験があります。インスリン抵抗性というほどの状態ではないにせよ、必要とするインスリンの量が確実に多くなります。それまで足りていたものが足りなくなるには理由があるわけで、それが生活習慣として良くないものであるならば、インスリンを増やして対抗するのではなく、生活をまともにしなくてはいけませんよね。

1型糖尿病で血糖値のアップダウンが激しく、全体としてもコントロールが良くない人で、一日のインスリン量が多い人は改善すべき点をノートにまとめた方が良いかもしれません。なぜ多くのインスリンが必要になってしまうのか、納得できる点と異常な点に分類すると意外と悪いところってあるものです。

深夜の低血糖

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深夜にふと目が覚めることがたまにあります。それは大抵の場合、眠りについてから1~3時間後くらいに起こります。

目が覚めたときに何の異常も感じることが無い時もありますが、強い不快感を感じることがあります。具体的には、

  • 腕~肩の虚脱感
  • 腕、胸、背中や腹の発汗
  • 動悸
  • 不安感や頭がハッキリしない感じ

これらの症状があります。感じる症状やレベル(血糖値がどれくらい低くなると感じるようになるか)は個人差があるので色々ですが、僕の場合は深夜目が覚める時には上記のような症状があり、その時の血糖値は低い時には40mg/dl台にもなります。大体40~59mg/dlで目が覚めるようです。

目が覚めた時には、自分が今低血糖で目が覚めたのかどうか、まずは体感的に理解しようと試みます。症状的に間違いないな、と判断できる時でも必ず血糖値を測定します。理由は簡単で、血糖値を見て必要最低限の砂糖しか摂取しないためです。血糖値のコントロールが悪い患者のブログを観察すると、多くの場合、低血糖の発生をきっかけにして血糖値を壊れたジェットコースターように激しく動かしてしまっています。無駄な糖を摂取することで、

  • 不必要な値まで血糖値を上げてしまう
  • 日々の食生活に計上されるはずではなかった余剰カロリーを摂取してしまう

血糖値も体重も体型も悪くしてしまう要素を抱えることになります。これではどれだけ毎日ちゃんと生活しているつもりでも結果(日々の血糖値やHbA1c)が出ません。まるで常に失敗しているかのような数値しか出ません。

低血糖の症状を感じた時にちゃんと血糖値を測ってから砂糖を飲むなどの対処をすることには大きなメリットがあります。それは、体感と実際の血糖値の関係について把握できるということです。低血糖が体感できなくなる恐ろしい状態・無自覚性低血糖はある日突然やってくるのではなく、徐々に体感できる血糖値が下がっていって、40mg/dl台や30mg/dl台になっても全然気付かないという体験が必ずあるそうです。これに気付かないのはなぜかというと、体感した時の数値の変化を知らないからです。よって、体感する度にきちんと計測しておけば、自分の体がおかしくなっていることに気付きやすくなります。今までにも何度か、このように体感できる血糖値がだんだん下がってきた経験があります。60mg/dl台、50mg/dl台後半でわかりにくくなり、体感した時にはもう50mg/dl前半になっていることもありました。これはしばらく高めの血糖値で過ごすことで元に戻せることに気付いたので、日々チェックを忘れていなければ心配しなくても大丈夫そうです。詳しくは別の機会に書いてみたいです。

そう考えると、夜目が覚めるのは困ったことですが、低血糖(危険ではないレベル)で目が覚めないで、自分では動けないレベルになって初めて目が覚めるであるとか、全く目が覚めずそのまま昏睡状態になってしまうとかに比べれば、まだありがたいことなのかな、と感じます。滅多にないからこそ言えるのでしょうけど。

普段から血糖値が高い人であれば、80~100mg/dlくらいでも低血糖の症状を感じるそうで、事実、僕も最初の入退院の直後、ひどい症状を感じた時の血糖値は90mg/dl台でした。今では90mg/dlなんて普通の、正常な血糖値じゃないかと笑ってしまいますが、当時は知識もなく、ただただ言葉でしか説明を受けていなかった初めての症状に必死で砂糖を飲んでいました。

今ではコントロールも良くなったため、血糖値が70mg/dlを切らないと低血糖の症状を感じることはありません。ゆっくりゆっくりと血糖値が低下しているときには65mg/dlくらいでも少ししか感じません。今は低血糖で砂糖かブドウ糖しか摂らないのは普通ですが、以前、低血糖で喜んでお菓子やパンをかじっていた頃はもうちょっと不安定でした。あの頃の自分に「おいしいものは低血糖じゃない時に、堂々と味わって楽しみなさい、バカ!」と言ってやりたいですね。

日本だけではなく、世界で血糖値の正常範囲・基準というものが揺らいでいます。ある時代には正しいと思っていた正常範囲でコントロールしていた結果、予想以上に合併症の発症率や死亡率が高くなってしまい、慌てて基準を引き上げたのでしょうか。

医師の考え方によっても、本当にバラバラです。僕は医師の異動が大変多い病院を利用しているので、主治医はコロコロ変わりますが、HbA1cひとつとっても意見はバラバラです。

あるおじさん先生は「HbA1cは6.5%を切っていればそれでいい。合併症になっても、目の出血なんかレーザーで止血したらいいんだ。」なんて言ってました。

自称1型糖尿病にも強いという30代の女医は「HbA1cは高くても5.8%までで踏みとどまって下さい。6%台では10年20年過ごす内にほとんどの人が軽い神経障害や眼底出血を起こします。」と言いました。この先生にはちょっと意地悪く、若く健康で何も問題がなかったとしたらHbA1cはどれくらいになるのか?と尋ねたところ、一瞬の迷いも無く「4%台ですよ。5%台になった時点でもう要注意です。」と即答しました。

それからしばらくすると、いつの間にか食前(食後3時間以内ではない時間)の血糖値の上限は99mg/dlに変わっていました。健康診断で100mg/dlを超えていると、結果表に*マークが付けられます。同様に、HbA1cは5.2%を超えると*マークが付けられるようになりました。

ほんの少し前までは食前血糖値は110mg/dlまで、HbA1cは5.8%までが正常でした。僕個人の感想としては、予想以上にタイトになったなあという感じです。会社の健康診断の結果は会社に公開されているわけで、1点の問題も指摘されたくないですからボケっとしていられません。

こうやって基準が変わる前からある程度予測はしていたので、僕は僕なりに一般的なそれよりも厳しい基準を設けてコントロールしてきました。

 正常注意不可自己平均
HbA1c4.3%~5.2%5.3%~5.8%5.9%~4.8%~5.2%

[mg/dl] 最悪不可注意正常注意不可最悪自己平均
食前血糖値~3940~4950~5960~99------100~119120~70~80
食後血糖値~4950~5960~6970~130131~140141~179180~100~120

自分の中では厳しくしていたつもりでしたが、少なくとも食前血糖値上限の99mg/dlとHbA1cの上限の5.2%は厳しくもなんともなくなってしまいました。今すぐ見直すということもないんですが、健康診断に引っかかるようでは困るのでほんの少しは考えた方がいいのかもしれません。

そう言えば暑くなってから夕食前血糖値が少し高めになり、たまに100mg/dlを超えています。今月の診察ではHbA1cが5.1%です。この調子だと来月は5.2%になりそうです。

1型糖尿病患者にとって、何かを食べる時に常に気にしなくてはならないのが、

  • どれくらいインスリンを注射したらいいの?

これに尽きます。これから食べようとしているものの栄養成分が明らかになっている場合なら、計算の方法もわかりますが、必ずしも表示があるとは限りません。予測して試すにしても、手掛かりすらない状態で闇雲にインスリン量を決めるのも危険です。重篤な低血糖や高血糖の原因は完全に計算からはずれているインスリン注射の使用です。大きくはずれれば死亡することもありますし、それが乗り物や機械の操作中であれば、自分だけではなく、家族や友人、そして無関係の人々に怪我をさせたり殺したりする可能性だってあります。そんなことになるくらいなら食べない方がマシです。

軽微な低血糖や高血糖であれば、それもデータ収集の内。今後の糧であると納得しつつ修正していけば済みます。よって、手掛かりとなる計算方法、情報があれば良いということになります。

栄養成分表示で「1個あたり」「1食あたり」という表現と共に良く見掛けるのが「100gあたり」という表現です。

「100gあたり、炭水化物21.4g」という表記があったとして、これはどのように応用したら良いでしょうか。「1個あたり、とか1食あたりで書けよな!プンプン!」という人もいますし、そういうブログも見掛けますが、見当違いな意見だと僕は考えます。

答えは簡単で、これこそ食べ物の重さと炭水化物の重さの比そのものです。上の例で言えば、21.4%だということです。誤差や個体差というのは否定できませんが、概算として、

  • 白米 37%
  • 食パン 50%
  • フライドポテト 32%
  • じゃがいも(水煮) 17%

このような例があります。これを知っておけば、例えば今日の朝食で食べる食パンの炭水化物は何グラムで、対応する超速効型インスリンは何単位なのかが計算できます。なんとなく食べたくなったフライドポテトだって目安となる計算ができるということです。

こういった計算は「100gあたり・・・」という栄養成分表示であれば、炭水化物の欄に記載された重さそのもののことを指しますし、「1食(240g)あたり炭水化物62.7g」という表記なのであれば、

62.7[g] / 240[g] = 0.261

と、26%だと計算してメモっておけば使えます。

話が簡単ではなくなるのが、食べ物は食材そのままで食べるばかりではない、ということです。加熱調理したりするわけで、水分量が大きく変わります。水分量が変わるということは全体の重量が変わるということになりますから、調理法によって適用すべき数値が違うという点です。

解決策は2点あって、

  • 生の状態でのデータを使い、調理前に計算しておく
  • 調理方法別のデータを使う

です。どちらも有効な方法で、知っておくべきです。後者は簡単で便利な分、情報量がとてつもなく多くなってしまいます。

しかし、心配は要りません。便利なものがあります。それがグリコ すぐわかる 栄養成分ナビゲーターです。「一般食品index」へ進み、調べたい食品の名前で検索します。そして、可食部100gを指定して計算するだけで、良くある調理法別に情報を得ることができます。

よく食べるであろう食材については「あれが何%、これが・・・」とメモっておくと良いです。

こだわり過ぎて、炭水化物の割合が1%や3%のものまで細かくメモって計算し始めると、ご飯食べるのが嫌になってしまいます。1%の割合のものを100g食べたところでどうせ炭水化物1gです。血糖値にして4mg/dl。もうどうでもいいです。そんなの誤差の範囲です。血糖値の測定器、誤差がどれくらい出ているのかを知っていれば笑って済ませられます。

よって、こういう計算をするのは、

  • ご飯、パン、麺類などのいわゆる「主食」と呼ばれるもの
  • じゃがいも、さつまいも、かぼちゃなどの炭水化物の割合が高い食べ物
  • おやつ

あたりに限定してはどうでしょうか。だいたいこれだけでも不自由しないものです。これだけでも知っているのと知らないのとでは天と地の差があります。血糖値の乱高下を繰り返し、HbA1cが5.8%を超えてしまうような人の多くがこういう計算を知らない、もしくは、無視しています。無視してコントロールが悪いのは本人の意思なので別にどうでもいいんですが、知らないで苦労しているとしたら悲しいことです。簡単なことなのでぜひ知って欲しいです。

こういう計算は食品それぞれの誤差や個体差は当然あります。ちゃんと計算したつもりでも少し外れてしまうことだってあります。外れてしまうなら無駄だと考えることもできますし、致命的な外れ方しないためには有効と考えることもできます。僕は後者の考え方です。

例えば、白米を37%で計算したら、どうしても血糖値が高くなってしまう、というのであれば、40%に修正してしばらく過ごしてみる、などの工夫ができます。そうやってデータを収集し、自分なりにカスタマイズしていけば、必ず自分にとって使えるものが構築されます。発症してから死ぬまでの長い期間使える情報ですから、コストパフォーマンスの非常に高い情報だと考えます。

1型糖尿病は生活習慣病ではないので、2型糖尿病のような食事制限は必要ありません。よって、なんでも自由に食べられます。

とは言うものの、何かを食べる度に血糖値をむちゃくちゃに変動させ、コントロールを失うようではあっという間に合併症になったり、死亡するまでの期間が短くなったりします。それでも幸せな人はむちゃくちゃで良いのでしょうが、僕はそんなの嫌です。

というわけで、好きなもの食べつつも、それなりにコントロールできる方法について考えます。

まず、インターネットで検索して一番簡単に見付かり、多くの人が実践するであろう方法について。それは500ルールとか1800ルールなどという言葉と共に登場することが多いみたいです。1単位のインスリンで代謝できる炭水化物の重さについての計算方法です。

  • インスリンの単位数
  • 炭水化物の重さ
  • 血糖値

これらには不確定な変動要素を除いてざっくりと計算できる、大雑把な関係が存在しているはずで、それを簡単にまとめたものが500ルールや1800ルールです。

(インスリン1単位で代謝できる炭水化物の重さ) = 500 ÷ (1日のインスリン総量)

(インスリン1単位で下がる血糖値) = 1800 ÷ (1日のインスリン総量)

また、義務教育の数学の教科書を読んだことがある人なら、上記のふたつの式を見ることで、炭水化物をどれくらい摂取すると血糖値がどれくらい上がるのかが見えてくるでしょう。

一般的には、インスリン1単位で代謝できる炭水化物の重さは10~15gになるようです。僕の場合は1日の総インスリン量からは計算が外れますが、インスリン1単位で12gの炭水化物を代謝することができるようです。もっと数字を丸めて、次のように定義してみました。

炭水化物12g = インスリン1U(単位) = 血糖値50mg/dl

(炭水化物1g = 血糖値4mg/dl と換算)

数学的に矛盾が無いように書くと血糖値は45mg/dl、炭水化物は12.5gとすべき(1日の総インスリン量を40単位と仮定)なのですが、50mg/dlの方が簡単に応用できるため、このようにしています。

応用範囲は意外と広いというか、むしろ、生きていく上で遭遇する多くのシーンで活躍してくれます。

 

【応用1】食事・おやつ

 「このチョコレート食べたいんだけど、注射どうしたらいいんだろうか・・・?」このお菓子の箱には栄養成分表示があり、「炭水化物37.1g」となっていました。そこで、

37.1[g] / 12[g/U] = 3.1[U]

という計算によって、超速効型を3単位注射することに決めました。

 

【応用2】低血糖

「なんかフラフラするな・・・。」食後5時間で体調の変化を感じたので血糖値を計測してみると57mg/dlでした。食事から5時間経過しているということで、通常であればだいたい次の食前血糖値に等しいはずで、平均的には70~90mg/dlのはず。よって、現在は20mg/dlくらい低くなってしまっているということになります。そこで、

20[mg/dl] / 4[mg/dl・g] = 5[g]

という計算によって、炭水化物を5g摂取すべきだとわかりました。そこそこ短時間で血糖値を上げるために、スティックシュガー6gを1本飲みました。おそらく血糖値が25mg/dl前後上がるものと予測しました。2・3分で低血糖の症状がなくなり、次の食前血糖値は79mg/dlだったので予想の範囲内でした。こんなに簡単な計算ができるだけで、低血糖の対応としての補食で血糖値を無駄に上げてコントロールを乱すという間抜けな生活をせずに済みます。

 

【応用3】食前血糖値が高かった場合の調整

さて、これから夕食です。普段は食前血糖値が80mg/dlくらいのはずなのに、今日のお昼ご飯のインスリンの計算をはずしてしまったようで、食前血糖値が117mg/dlもありました。普段よりも37mg/dl高く、コントロール上限の99mg/dlから見ても18mg/dlのオーバーです。

お腹もあんまり空いていなかったので、通常の食事量よりも白米を少し減らすことにしました。食べたくないのだからちょうど良かったです。

普段の血糖値との比較、また、コントロール上限との比較からざっくりと考えて、25mg/dl分相当の白米を減らすことに決めました。白米の重量の炭水化物重量比は37%と考えて、

25[mg/dl] / 4[mg/dl・g] / 37% = 17[g]

という計算で、いつも200g食べている白米を183gに減らしました。ほんの一口なんですけどね。

逆にお腹がいつもよりすごく空いているから、ご飯とインスリンを両方増やして血糖値も合わせていく日もあります。

通常であれば、超速効型インスリンを3単位増やして、ご飯を100g増やせば計算が合いますが、上記計算で血糖値を合わせるために17g減らすことがわかりますから、今日の場合はインスリンを3単位増やし、ご飯は83g増やせば良いということになります。283gのご飯・・・。どう見ても何かのどんぶりです。大盛りです。

ちなみに、すき家の牛丼の大盛と特盛、メガ牛丼はどれも白米320gです。

応用3で出てきた、白米の重さの37%が炭水化物の重さに相当する・・・という考え方は別の機会に少し詳しく書いてみたいです。この考え方ができれば、いろんな食材に対する応用計算ができるようになります。より自由に食事しつつ、血糖値をより良くコントロールできることになります。

低血糖の時には十中八九以下のものを摂取します。

  • スティックシュガー(6g)
  • 固形ブドウ糖(1粒あたり3g)

お菓子やその他の食べ物は好んで摂取しません。

詳しい理由は別の機会に書きますが、端的に言うと、上記2点は容量・飲み易さ・携帯性・保存性に優れているからです。また、血糖値の上昇が最も早く、血糖値1mg/dlあたりのカロリーが最も低いという点も忘れてはいけません。

普段の食生活

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入院中は完全に2型糖尿病患者として扱われていたため、出てくる食事はいわゆる「糖尿病食」。失礼な言い方かもしれませんが、普通の感覚から言えば食事というよりむしろエサに近いです。

そもそも日本の2型糖尿病治療でいう食事療法というのは、カロリーしか見ていない時点で血糖値をコントロールするという目的が皆無であると言えます。カロリーは体重をコントロールする上で大切な数値になりますが、カロリーと血糖値の間には数学的な関係が成立していない以上、血糖値をコントロールする上でカロリーに目が奪われているのは大変間抜けな話です。

事実、病院で出てくる食事というのは、カロリーは計算されていますが、注射の単位数を固定していると血糖値が乱高下しました。今思えば当然の話です。この食事、炭水化物が大きく変動してしまっているからです。

そもそも炭水化物・たんぱく質・脂質に分けて考えると、たんぱく質と脂質は血糖値をほとんど上げません。詳しいことは代謝の専門書などに書いてありますが、必要最低限の炭水化物が摂取できている状態であれば、わざわざたんぱく質や脂質を効率が悪さを無視してまで糖に変換しません。使いやすいものから使うのが効率が良いです。よって、血糖値に直接的・短時間で影響を及ぼすのが炭水化物となるわけです。

つまり、何も考えずにいつも同じように注射する単位数を固定していても、かなり安定した状態で血糖値をコントロールするために必要な食事について考えれば良いということなります。

食事のバランスは各家庭・個人・国・宗教によってさまざまで、どれが正しいということはないと思いますが、大切なのは、毎日の食事の内容をそれなりに揃えるということだと考えます。

一番シンプルなところで言えば、食事全体のカロリーが炭水化物・たんぱく質・脂質のそれぞれでどのくらいの割合になっているかを見るとわかりやすいです。日本で良く奨められているのが、

  • 炭水化物60%、たんぱく質20%、脂質20%

というバランスではないでしょうか。現在の日本で食事にあまり気を使っていない人であれば、

  • 炭水化物30%、たんぱく質25%、脂質45%

など、油脂類の摂取が大きく割合を占めている場合もあるかもしれません。これはこれで、悪くはないと考えています。国全体でこのような栄養バランスで成り立っているところもあるはずです。

大切なのはここからで、食事全体のカロリーを気にしつつも(太ったり痩せたりしたくないので)、この割合を日々大きく変動させないということです。だいたい毎日似たようなバランス・量で生活するという当たり前のことが血糖値のコントロールにはとても有利です。

僕の場合だと、普段の食生活では炭水化物を1食でだいたい100gくらい摂ることにしています。炭水化物の摂取量が決まってしまえば、注射の単位数もほぼ決まります。だから、普段の食事の時には何も考えずにいつも同じように注射を打って、それで血糖値はそんなに気にしなくても正常な範囲でいてくれます。

ちょっと食事には気をつけている家庭(最近だと幼稚園や小学校でも食育に関する講演会がありますね)では、こんなことは当たり前なのですが、少なくとも我が家では、僕の発症前はかなり無頓着でした。食事の量やバランスは毎日変動していました。

発症をきっかけに、子どもも食べている家庭の食生活について見直すことができました。結果として、血糖値のコントロールもついでに楽になったということなので、最初からそこを目標にはしていなかったのですが、気付いて良かったと思います。

普段、ちゃんと安定した食生活をしていると、たまにそこから外れるような食事をする時にも、普段の基準と比較して予想・算出される必要インスリン量と、食事そのものを分析して算出される必要インスリン量の2本立てで計算ができるため、計算を大きくはずすことが極端に少なくなるという強烈なメリットがあります。

いつもの食事とは大きくかけ離れたメニューでも楽しく食事しながらコントロールもバッチリ決めるためには、日頃、子どもも含めて安心して過ごせる安定した食生活が大切だと思います。

今夜のおやつ

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スーパーで買い物していて目に付いたので、山崎製パンのロールちゃん(ホイップクリーム)を買いました。

ウェブサイトで栄養成分表が見られます。炭水化物は61.8g。超速攻型5単位にしました。

ロールちゃんは実売価格で150円前後ですが、値段の割りにサイズがとにかく大きい。一人で食べるには大き過ぎる感じもしますが、おいしいのでペロリと食べてしまいます。ロールケーキが嫌いじゃない人にはお奨めです。

発症というか、1型糖尿病が発覚した時、通常では考えられないレベルで血糖値が高い状態でした。携帯型の血糖値測定器で測定できる上限を超えているレベルです。人によっては意識が保てなくなることもあります。

入院したところでそれが簡単に下がるはずもなく、いや、下げようと思えば下げられますが、危険性も否定できないので甘めにコントロールされます。入院初日、2日目辺りでは、食前でも300mg/dlをオーバーしていました。食後では500mg/dlオーバーも見ました。測定上限が600mg/dlなので、測定できる範囲に入っただけでもマシなのですが。

7日間の入院、そして退院となったわけですが、その時の血糖値はどうだったかというと、食前では150mg/dl前後も珍しくなく、食後では280mg/dl前後もガンガン発生していました。

こんな調子では短い期間で合併症だな・・・と、焦りを感じました。

しかし、病院では2型糖尿病の患者に対するものと同じような、食事制限がどうのとか運動が大事だとか、実に役に立たないことしか教えられていなかったため、何をどうしたら良いのかわかりませんでした。

そこで、インターネット上で1型糖尿病でもコントロールを良い状態でキープしている人を探せば何かヒントを得られるのではないかと考え、必死で調べました。意外とすぐに見付かりました。発症以来ずっと、ほとんどの月でHbA1cが4%台の人のブログです。

この時の衝撃は今でも忘れられません。1型糖尿病では食事制限なんて必要がないこと、家族と同じものを食べ、食べるものに合わせて注射の使用量を自在に変更し、比較的自由にしていても血糖値はちゃんとコントロールしていける、その実例が目の前にあるのですから。

良い結果にも悪い結果にも必ず根拠がある。その人の何が素晴らしくてその結果が得られているのか、自分なりに考え、真似できる部分は真似することから始めました。

すると、2週間程度で食前血糖値は80mg/dl前後で落ち着き、食後もほとんどが100~120mg/dl程度で、140mg/dlを超えるような高血糖状態もほとんど見ることがなくなりました。

そして、退院から3ヶ月、やっとHbA1cが初めて4.9%になりました。それ以降、気候の変化にどう対応したら良いのかわからなかった時期などで5.2%くらいまで上がってしまったことはありますが、大体HbA1c4.8%~5.2%の範囲でキープできています。

以降、目標はHbA1c4.8%~5.2%、できれは4.9%でぴたっとキープ、と定めました。

食事が自由にできなくて困っている人や、いまいち血糖値のコントロールがうまく行かなくて困っている人は、自分の理想とする状態に近い人を良く観察することをお奨めしたいです。他人の良いところ、その根拠を自分で並べてみること、真似してみることは必ず役に立ちます。

まずは参考になる、コントロールの良い人のブログを定期的に巡回するところから始めるのが簡単です。

糖尿病と聞くと、即座に自己管理できない人や生活習慣病というイメージを抱く人が多いのですが、全てに当てはまるわけではないのにな、と寂しく思うことがあります。

結論から言うと、2型糖尿病は生活習慣病ですが、1型糖尿病は生活習慣病ではありません。残念ながら、1型糖尿病は病気になりそうだという前兆もなければ、発生の原因も良くわかっていないため、発生を予防するとか治すとか、そういう概念がありません。食事や運動などの生活習慣の悪さから発症するものではないので、本人の意思でどうにかできるものではありません。よって、生活習慣病ではないのですから笑いながら、「贅沢病だよね!!!」なんて言われるとあまり良い気分はしません。知らないから言ってしまうだけでしょうから、そんなに悪意はないでしょうが。

避ける方法も治す方法もないと聞くと、誰でも絶望的になりそうです。僕もてっきり2型糖尿病だと思っていたので、「食事とか運動とか強制されちゃうんだろうな・・・頑張らないとな・・・。」などと入院中に思っていたわけですが、検査の結果1型糖尿病だと告げられた瞬間にやっぱり絶望感はありました。放置したら短期間で死んでしまう病気ですから。

とはいうものの、20世紀前半にはインスリンについての研究が進んだために、そうそう簡単に死んだりしない病気になりました。治療の方針は「すい臓が分泌できなくなったインスリンを注射で外部供給し続けること」です。つまり、一生注射しなければ生きていけないとも言えますし、注射さえしておけば生きていけるとも言えます。絶望していても生きていく上でメリットはありませんから、とりあえず生きていけるんだということで明るく考えることにしました。

このインスリン注射に依存した状態は、生活習慣病ではない1型糖尿病にとっては必須の状態です。1型糖尿病の全員が注射や専用のポンプを使ってインスリンを供給しなければ生きていけません。食事をどんなに工夫しようが、どんなに激しく高負荷で長時間の運動をしようが、それでは一切解決できません。

同じ状況として、生活習慣病である2型糖尿病で病状が進行して食事や運動では既に解決できないほど悪い状態になった場合の最終手段として注射が処方される場合と、すい臓の負担を一気に解除するために処方・・・つまり、2型糖尿病の発症初期だけ利用する場合があります。世間で多く知られているのが前者だけだったりするので、1型糖尿病や2型糖尿病発症初期の人も全部含めて「インスリン注射している人はその内死ぬ末期患者かつ節制できないダメな奴」くらいに思われていたりします。

医者や看護師みたいなプロでさえ、そう思っているのがいます。だから、世間一般の人がそう思ってしまうのも仕方が無いことです。それだけ実際に自己管理できないダメな2型糖尿病患者が世間には溢れ返っているということですから、同じ道具を使っている1型糖尿病患者も同一視されることは最初からそう理解しておく方が賢いと考えています。

というわけで、僕は本当に必要最低限の人にしか自分の病気のことを告げていませんし、注射や血糖値測定器などのデバイス類を使うところはもちろん、その所持さえも見られないように気を付けて生きています。コソコソしているようにも思いますが、変に勘違いされて不当な評価を受けるくらいならこっちの方が少しはマシだと結論付けました。

(2型糖尿病の一部の人に対しては大変嫌な、失礼な書き方ですが、同一視されたくないという考え方をしている以上、これが正直な気持ち、正直な書き方です。)